青貝宝尽し蒔絵大棗
田中宗凌 作
共箱
器胎全容に夜光貝、アワビ貝の断片を貼り合わせた華やかな大棗である。螺鈿は茶の湯の世界では「青貝」と称するが、名の如く光の屈折により、あらゆる色を見せる。甲面から肩の曲線、腰から裾に至る窄まり、畳付にかけての貝の断片を微細に貼り繋げた丁寧な仕事がなされている。
また、立ち上がりから内部にかけて、沃懸地(いかけじ)で仕上げ、宝尽くしの意匠が蒔絵されている。仄暗い茶室では目を引く一品ではなかろうか。夜光貝は沖縄方面の海に産する。茶器の蓋を開けると潮騒が聞こえてきそうでる。